
愚直に善悪を判断するものこそが損をする世界
正しいことが”社会のみんな”からは間違っている
これ以上に生きづらい世の中に、皆も一度は地に手をついた経験があるだろう
『自分が正しいと思うことを』
ただ、その解決の仕方がわからない中、人と出会い、環境を構築し、また生き方を模索していく
そんな一人の男の物語
『すばらしき世界』キャスト 主演:役所広司
原作『身分帳/佐木隆三』
三上正夫:役所広司

津乃田龍太郎:仲野太賀

吉澤遥:長澤まさみ

松本良介:六角精児
庄司勉:橋爪功
庄司敦子:梶芽衣子
井口久俊:北村有起哉
下稲葉明雅:白竜
下稲葉マス子:キムラ緑子
西尾久美子:安田成美
塀の外は我慢の連続

「カタギに生きる」
そう心に決め、13年ぶりの外の空気に触れた三上
少しずつ、社会に関わりながら、人との交流を増やしていく
生活保護担当の方
スーパーの店長
取材に訪れる人
自分ができることを見つけ、社会に関わろうと奮闘するも、やはり世界は甘くなく、何かとうまくはいかない
自分の力不足や社会から向けられる警戒の目
自身の特性でもある”怒り”と”暴力”に我慢と後悔を続ける
相談できる人や仲間と思える人ができていく中で
自分が探す”信じる母”の素性に突きつけられる現実
着実にコツコツと積み重ねて生きようにも、生きづらい
ひと時でも自分の居場所があったあの過去に戻れたら
でも、二度と手は汚さない
その葛藤に揺れながら、暖かな湯を床に叩きつける
我慢の連続だけど、空は広い

生き方を見失い彷徨う三上
その中で、いろんなものと出会う
過去の仕事仲間とその危機
自分が育った場所から得た温かみ
そして、無邪気な頃の記憶
いくつもの会話をやりとりし、幾許かの感情をぶつけながら自分を見つめ直す三上は
ついに、自分が社会に関わることのできる”正当”な役割を見つけることができた
それは、共に生きようと横を歩く人がいたこと
それは、三上が関わることを諦めなかったこと
それは、自分を見てくれている人がいたということ
過去には戻らず、そして、なかったことにせずにもう一度スタートを切ったのだ
それでも付きまとう生きづらさの中で見出だした生き方
助けられてきた葛藤と助ける方法が自分には足りないことを自覚する瞬間。 これがこの社会で生きることなのだと。社会に溶け込むことができた三上。正しいか間違っているかなんて関係ない。現代を生きるということは、こういう方法なのだと新たな役割を通して、気付く。
それを俯瞰で見た我々視聴者は、これをなんと思うのか
このメッセージは幾人にも届く映画

彼の境遇について
環境か出会ってきた人か運か
何を憎んで何を恨めば心が晴れるのか
何度も何度も繰り返して、気づいても繰り返してしまう
と、彼の境遇について誰もが原因を求めてしまうのだが
人生に原因などない。原因を求めるのは、その壮絶な人生に自分が耐えかねると思ってしまうから
彼の人生は、紛れもなく彼だけの人生であるからに
彼がゆっくりとでも歩んだ人生の良し悪しは、彼自身しか決められない
社会制度の限界、セーフティネットが掬える範囲、手を伸ばせるのは、ほんのわずかの範囲と改めて実感できた
その中でもとにかく、社会に繋がること。人と触れ合うこと。どんな形でも、人の目を見て生活できる環境を見つけてほしい
三上はそれを手に入れることができて、生き甲斐を見つけられるところまで来ていた
右手に握ったままのコスモスを
いつか無邪気に誰かへ渡せる日があればと
彼は幸せだったのだろうか
その心境も聞けぬまま、彼はそっと眠った