
『夢』
人はその一文字にどんな想いを乗せるだろう
「抱いたからこそ人生を狂わされた」「諦めるが先決」「諦めて初めて大人になる」
「追い続けるからこそ世界が輝く」「生きるための糧」「持って初めて人になる」
重く深く、そして現実と隣り合わせのその『夢』を追い続ける人の隣には、応援し続ける人がいる
手を取り共に歩み、そして解き放たれるその瞬間を見るために
この生まれてきたと感じるために
アニメ『メダリスト』という作品 あらすじ

この楽曲は、『つるまいかだ』によって描かれる『メダリスト』という漫画がアニメ化した際のOP主題歌として書き下ろされたもの。
アニメ化すると聞きつけた際、米津さんがその楽曲作成に名乗りを挙げたほど愛読していたという。

11歳小学5年生の主人公『結束いのり』は、スケート選手に憧れていた。しかし、アイススケートという世界で戦い始めるには、11歳でも遅いと言われるほど、幼少から体に染み込ませていくのがスケートという競技。学校でもうまく馴染めずにいるいのりにとって、スケートだけが生き甲斐の中、親の反対や年齢という壁と闘いながら、選手として挑戦していく。

明浦路 司は、アイススケートショーのオーディションに挑戦し続けるも、合格には至らず、フリーターで食い繋ぐ生活。なんとかスケートの世界で食べていけるようにと踠く中、かつてもアイススケートダンスのパートナーからスケートクラブのコーチを打診される。コーチという役割に価値を感じず、断りを入れようとするも自分の現状との葛藤に悩む中、主人公『結束いのり』と出会う。
まだ小学生の子が遅すぎるという、年齢に悩むのは、あまりに酷すぎる現実。
中学生からスケートを始め、選手を目指すには遅すぎる現実を背負いながら続けてきた司にとって、いのりがぶつかる壁は苦しいほど理解できる。
他の競技に比べ、かかる費用の次元が違うことを見ると、リスクと周りから突きつけられるものは多くある。
それでも司は、いのりの魅力を信じ決心する。コーチとして、必ず誰もが認める選手にする。と
いのりは、覚悟を決める。強く手を引いてくれる司を信じて、スケートの世界で戦っていく。と
その『コーチ』と『選手』との関係を
弓と矢(BOW AND ARROW)
と表現し、この楽曲を書き下ろした。
きみの掌を強く引いて負けない矢を放つ

憧れはそのままで 夢から目覚めたその先には夢
憧れのその先へ 蹲るきみを見つけるため
いのりと司の心情を対比させて描かれる詩。
互いに超えられぬ壁に踠きながらもその手を引いて目指すところは合致する
そう君の苦悩は君が 自分で選んだ痛みだ
そして掴んだあの煌めきも 全て君のものだ
僕は弓になって 君の白んだ掌をとって強く引いた
今君は決して風に流れない 矢になって
木目を覚えるほど下を向き、俯いて、どれだけの時間を過ごしただろう
今、宣うほど苦しい時間は、君と僕が選んだ道。その代わり、ステージで輝き煌めく瞬間、その歓声も、全て君のものとなる。
まだ何もないその白い手を強く引いて、誰にも負けない、そして誰もがその眩しさに気づくほどの矢として放ってみせる。
その輝きにふさわしい歓声を受けて
未来や期待値を乗せた数多の視線すら追い越して
どんどんと見違えていくその矢は、今この指から解き放たれ、美しく氷の上を突き進む
作品を浮かび上がらせるこれ以上ない主題歌

感動です。
キャラクターの心情を曲に乗せ歌い上げる。主人公たちが、苦悩を抱えながらそれでも氷の上で舞っていく姿が鮮明に浮かぶその的確かつ美しい詩こそ、タイアップ曲を作る米津さんの真骨頂。
唯一無二なことは言わずもがな、『メダリスト』という作品とこの楽曲に向き合うたび、鳥肌が止まらない。
イントロを耳にする度、気分が高揚し、スイッチが入る。米津さんのアップテンポな楽曲は、他にはない、エネルギーを生み出す音が鼓膜を揺らすのだから、何度も何度も聞き続けてしまう。
ぜひ、ライブで聴きたい一曲でもありますね。