
「好きに勝る物なし」
そう電波に乗せて届けられた言葉は、何よりも重く、誰よりも鮮明な思いが乗せられていた
好きなものを好きなままで居続けることも難しいこの世の中で
追い続けられる限界は、時がそうさせたり自分がそうさせたり
はたまた、環境がそうさせたり
生きることはいろんなものを諦めて紡いでいくもので、きっとそれが”普通”の生き方なのだろう
そんな”普通”の壁に何度もぶつかりながらも決してめげなかった
膝を折らなかった
その理由はきっと
『映画:さかなのこ』キャスト 主演:のん
誰もが知るお魚博士の『さかなクン』による自叙伝を原作として制作された『映画:さかなのこ』
さかなクンの半生を描くこの作品は、さかなクンをさかなクンたらしめるその姿が見られる
フィクションはいくつかありながらも、そのほとんどが実体験からなる映画だからこそ、そのリアリティとの調和がこの作品が魅力的なものとなる所以だろう
『好きなものを追いかける』『好きなものを信じる』
誰もが持つその『好きなもの』を浮かび上がらせ、ただ明るく見えていたさかなクンの苦悩を想像させる
どんな壁ももろともしない強さ

「あの子は他の子と違う」「魚ばかり追いかけておかしい」
世間から見るその姿は、その言葉の方が多数派なのかもしれない
ただ一つのことを追いかけ続け極めることは、この世界じゃあまり受け入れられない
多彩に多様に能力を伸ばして、得意分野を伸ばすより、不得意なものをなくしていく方が魅力があると思われる
そんな壁に幾度とぶつかるミー坊だったが、決して挫けることはなかった
それどころか、そんな言葉に目を向ける時間を何よりも魚へと向けていた
目もくれず歩き続ける
自分が何者なのかを考えるより、世界がどう移り変わっていくかを考えるより
とにかく、大好きな魚に目を向け続けた
それでも、生活は続く
世間のルールに則り、生活をしていかなくてはいけない
好きなことにそい、いろんな仕事をしてみたけれど、上手くはいかず
そこで初めて痛感する現実にも、負けなかった
好きなもので成功したその秘訣は、好きを信じ続けたこと
疑うこともせず、ただ一度も好きな気持ちに疑問を持たず、生き続けたこと
その時間がそうさせたのだと、この映画を通じ伝わってきた
そしてもう一つ
その姿を信じ続けた人がいるということ

その姿を信じ続けた人がいたこと
その姿を守り続けた人がいたこと
それこそが、ミー坊をミー坊たらしめた要因なのだろう
『しっかりした大人へ将来へ』
そんな進路指導にも屈しなかった母
一つでも好きなことがある、そんなミー坊を信じて止まず、背中を押し続けた存在
そう誰しもできることではないこの行動こそ、ミー坊を伸び伸びと生きられる環境を与えていた
『漠然な夢を笑うもの』
そんな失礼な人から守ってくれた友人
幼い時からミー坊に触れながら、その魚に対する熱意をずっと見続けた存在
その魅力を誰よりも何よりも知っている自負がある
だからこそ、ミー坊の夢を笑う人は許せなかった
だからこそ、世間にその魅力を届けたかった
その真っ直ぐな思いは、誰も傷つけない目はその周りをも惹きつける
見守り続けてくれる存在も、見守り続けたいと思わせてくれるその人の魅力があったからこそ
ミー坊の周りは、優しい世界に見える、心が洗われる
醜い世界でもその美しさを感じさせてくれるそんな映画だった
どこまでも、優しい映画

主人公ミー坊の明るさが、この映画全体の雰囲気を作ってくれる
誰も傷つけない主人公
関わる人を笑顔にさせる主人公
理想的な創作的な主人公なのだが
モデルとなるさかなクンは、テレビから見ていてもそういう存在だった
好きなことを追いかける
誰でもできるようで、誰にでもできることではない
その理由は、大半の人誰もがわかっている
何がその夢を諦めさせるのか、誰もがわかる
突き詰めればこんな世界も広がっていたのだろうかと
淡い夢の期待を思いながらも
いやいや、やっぱりその努力を努力とも思わず駆け抜けられる才能の方がなかった私には、その想像をする資格もなく、思うたびやはりこの方は尊敬に値する方なのだと再確認できた
好きなものを好きでい続けられる幸せを噛み締めながら
そう信じて、明日からも生きていく