
がむしゃらにただ進む
効率も方法もわからぬまま、思うがままに走り続ける学生時代
どんなものに出会い
どんな言葉を聞いて
どんな人に出会うのか
ほんの小さな蝶の羽ばたきで、その人の人生が大きく揺れ動く
もしあの時、あの言葉を信じていれば
もしあの時、もっと寄り添ってあげたら
もしあの時、逃げずに真剣に向き合っていたら
成功は一瞬の輝きで
失敗は永久の後悔
もう一度、話し合い向き合い、すれ違いをやり直せるのなら
きっとそれは生きているうちでなければ
『映画:泣くな赤鬼』キャスト 主演:堤真一
決して綻ぶことのない赤鬼
向き合い方に試行錯誤する赤鬼
同じ目標を持っているからといい、その方法が必ずしも一致するわけではない
当然、監督と選手という立場なら
そして、教師と生徒という立場なら尚更
夢を死に物狂いで追いかける気力が無かったのか
それとも、その方法を知らなかったのか
とにかく目の前の白球を追っていたはずだったのに、やり方が違うと突きつけられる
楽しかったはずの野球を楽しむ方法すらも分からなくなっている
そんな生徒を目の当たりにする赤鬼は、導き方を模索する
努力すれば、頑張れば、とにかくがむしゃらに
目の前が真っ暗になる程、明るい言葉をかけ続けるも、ゴルゴには響かない
それどころか、より互いの距離が空く
『頑張れって先生・・どうやったらいいんですかね』
唯一向けられたSOSから赤鬼は、目を背けてしまった
言葉の掛け方に悩み、紆余曲折したその関わりで野球を失わせてしまったと感じる赤鬼は、どうにかあの頃のゴルゴのように野球をしてほしくて、どうにか夢に向かって戦い続ける気力を持ってもらいたくて
そう、思う頃には、すでに遅かった
初めて見せた綻びで受け取ったサイン
どうしようもできない現実を突きつけられるゴルゴは、生きる気力も無くし、愛する人との時間も苦しくなっていた
死に直面し、思うことは、過去の出来事
自分を動かし、礎となっていた経験は、やはり一つだった
そんな中出会う、赤鬼との再会は、幸か不幸か、もう一度自分を見つめ直すそんな時間となった
夢を捨て、夢を諦めた赤鬼は、野球には心はなく、過去の栄光に身を置き、気力の入らない毎日
そんな中にゴルゴとの再会。過去を振り返り、自分の足元を見つめ直す時間。見違えたような、それでもやはり変わらない過去の教え子の姿と戦う姿に、赤鬼はもう一度彼に向き合い始める。
苦しむ渦中に、初めて腹を割って話し合う二人。
刻一刻と迫る時間に、焦りながら、やり残すことのないようにと動く赤鬼
そしてやはり、行き着くところは、追いかけ続けた白球をもう一度握ること
泥だらけに、悔しさも嬉しさも一緒に受け止めていたその野球を最後もう一度向き合うことにした
『赤鬼は人前では泣かない』
そう言い張る赤鬼の目にも、悔しさなのか悲しさなのか
言葉では決して言い表せない思いが感情となり、表情に見せた
その表情こそが、どんな言葉よりも行動よりも
ゴルゴの心を安心させたものとなったのではないか
やるせない現実と戦う一人の若者が、共に戦った家族と未来ある子どもへ託す、思いを込め、サインを送り
安らかに眠った