
「児童書・絵本」という分類には、決まって対象年齢が付随する
わかりやすい内容、かわいい絵、キャッチーなキャラクター
大人になるにつれ、それらを俯瞰から見るようになり、内容には入り込むことは少なくなる
そんな固定概念を遠の昔に薙ぎ払い、年齢も性別も世代も関係なく読む人全員を魅了させ、考えさせる
そんな作品たちを生み出す人
『エドワード・ゴーリー(Edward Gorey)』
絵柄や名前など聞いたことがある人も多いはず、その世界的な児童書作家
2024年4月より、『エドワード・ゴーリーを巡る旅』という展示会が日本各地で開かれていた
かくいう私も絵などは見知って居たものの、ゴーリー氏の人物やその作品の細部までは、この展示会を見るまで焦点を当てることはなかった
一枚の絵に対する狂気的な線の数
美しさも怖さも不気味さも感じられる世界観
心を引き寄せられる内容
そのどれをとっても、やはり児童書というには、あまりに異質であるからに
唯一無二な存在として、いまだに名が語り継がれている
そんなゴーリー氏について、『エドワード・ゴーリーを巡る旅』を元に少し振り返る
『エドワード・ゴーリー』という人物と作品

展示は、第1章から第5章まで、章ごとにその作品と人物像について語られていた
数ある作品の貴重な原画をみながら、解説と共に触れることができた時間
【第1章:ゴーリーと子供】
ゴーリー氏が描く絵本は、幼児や子供が主人公になっている作品が多くある。しかし、そのどれもが悲惨で不条理な終わりを迎えるもので、絵本や児童書の常識からはかけ離れる。
その代表的な作品でもある
『不幸な子供』

何不自由なく裕福な家で育つ一人の少女の物語
幸せに包まれ、ハッピーな作品と思いきや、これでもかと思うほど次々に不幸が舞い込んでいき、読んだ後にはとても言葉を発せられるような心情にはならないそんな作品
因みに、ゴーリー氏の絵の特徴として、狂気的なまでの線の数の書き込みがあり、この作品は線を描きすぎて疲れ、休止をしながら5年の年月をかけて描かれた作品だそう
またこの章では、ゴーリー氏が幼少期に描いていた絵の数々も紹介されており、この頃の画風とは違い可愛らしい絵たちが展示として並んでいた
【第2章:ゴーリーが描く不思議な生き物】

ゴーリー氏の作品の、もう一つの特徴として不思議な生き物たち
代表的な作品の『うろんな客』の主人公で名前のない正体不明な生き物
また、私が一番好きな作品『狂瀾怒濤』のスクランプ、ナイーラー、フーグリブーそして、フィグバッシュ
その奇妙でありながらもどこか愛らしい姿のキャラクターたちは、人間味すら帯びていることでとても魅力を感じられる。
これぞゴーリー氏の世界観だと見せつけられる章となっていた
【第3章:ゴーリーと舞台芸術】
ゴーリー氏の活動は絵本だけに止まらず、自身の趣味でもあったバレエの演出や脚本まで多岐にわたる活躍を見せていた。
また、演劇舞台のセットデザイン、ポスターなどを手掛けながら自信が演じることもあったという
そして、ゴーリー氏がアメリカでの知名度を一気に上げたものとして、テレビ番組『ミステリー!(mystery!)』のオープニングアニメーションを手がけたことが大きいという。
その映像は圧巻で、抽象的な場面を見せ、ゴーリー氏の絵がそのまま動き見る人を引き寄せます
【第4章:ゴーリーと本作り】

ゴーリー氏がこだわって使うペンや道具が並べられていたこの章の展示
また、ゴーリー氏の絵本のテキストは全て手書き
2作品目『傾いた屋根裏』でサンプルとして書き入れたものが出版社に気に入られ、そのままやめられなくなったと語っていた。
ゴーリー氏の絵本作りの基礎では、イギリス小説を乱読していたそう。
彼が亡くなった後、家には2万6千冊以上の蔵書が残されており、本好きであったことがよくわかり、その基盤の一旦が見えた章となっていた
【第5章:ケープコッドのコミュニティと象】

ミュージカル劇『ドラキュラ』で賞を受賞した際の賞金で、ゴーリー氏はケープコッドに当時築200年の家を購入
行きつけの食堂が紹介されていたり、地域の人との交流も深めながらその家は『エレファントハウス(現ゴーリーハウス)』と呼ばれ、親しまれていたことがよくわかる。
そのケープコッドという地で、60歳をすぎたゴーリー氏は『版画』という分野に足を踏み入れる
改めて、その『版画』の世界を学びながら、亡くなるまでその新境地に挑戦し続け、幾つもの作品を生み出していたという
『エドワード・ゴーリーを巡る旅』魅力あふれる絵本やグッズたち
展示を見終えた後には、ゴーリー氏の作品や関連したグッズたちがあったので、色々と購入してみた
※絵本は画像にリンク貼っておきます









一生寄り添う作品たち
『エドワード・ゴーリーを巡る旅』は以下のスケジュールで行われていた





- 2024年4月20日(土)~6月23日(日) 千葉県佐倉市立美術館
- 2024年7月6日(土)~9月1日(日) 神奈川県横須賀美術館
- 2024年9月14日(土)~11月10日(日) 奈良県立美術館
- 2025年3月1日(土)~4月6日(日) 愛知県松坂屋美術館
- 2025年4月12日(土)~6月8日(日) 香川県高松市美術館
児童書としての発刊がされていたものの、その内容から大人向けと言われるゴーリー氏の作品
非情で無情 無垢な子供達に降りかかる不幸 無数の線で描かれる暗く静かでシックな絵
読者の数だけ読み取れる人間の表情と 不気味で怪奇を感じる愛らしい怪物たち
そのどれもがゴーリー氏にしか書き表せない世界観であり
一度目にしたモノを、一生虜にする
そんな不思議な力を感じた展覧会であり、私の心を掴んで離さない