
過去を振り返り、過去を思う
決して今を生きて居ない訳ではない
けれど、桜を見ても、電車を見ても、雪を見ても
思い返すのはあの頃の日々
実写映画『秒速5センチメートル』の主題歌として書き下ろされた『1991』という楽曲
作品上の時系列に加え、米津さんが生まれた年でもあり、また監督を務めた奥山さんの生まれ年でもあるという
楽曲の迫力とは裏腹に、たった一つのメッセージを呟くように歌ったこの楽曲は改めて米津さんらしさと言ってもいい歌となっている
何度思い返しても変わらぬあなたへの想い

決して未来に期待も希望も持てずに
ただ、過ぎる時間を淡々と追っかけていた今
出来ることと言えばふと空を見上げて想いに耽ること
君の声が聞こえたような気がして 僕は振り向いた
1991僕は生まれた 靴ばかり見つめて生きていた
いつも笑って隠した 消えない傷と寂しさを
1991恋をしていた 光る過去を覗くように
ねえこんなに簡単なことに 気づけなかったんだ
優しくなんてなかった 僕はただいつまでも 君といたかった
どんな新しいことを始めようとも
あらゆる環境に身を置いたとしても、生きているようで、死んでいるようで
決して自分の居場所はそこではなかった
遠くを見つめては、寂しさなんかないような表情を作って居たけれど
今すぐにでも枯れるほど叫んでいたかった
息ができないほどに、いつまでも
どこで誰と何をしていても ここじゃなかった
生きていたくも 死にたくもなかった
いつも遠くを見ているふりして 泣き叫びたかった
1991恋をしていた 過ぎた過去に縋るように
ねえ小さく揺らいだ果てに 僕ら出会ったんだ
息ができなかった 僕はただいつまでも 君といたかった
たった一つの願いそれは『君といたかった』
ただそれだけだった
楽曲唯一『今』の言葉と想い
僕は振り向いた
靴ばかり見ていた
泣き叫びたかった
君といたかった
そう歌われる歌詞たちはどれも『過去形』で、3分47秒間ずっと過去を振り返りながら、瞼の裏に焼きつく景色を想像している
それでもふと戻る現実が垣間見える詩
雪のようにひらりひらり落ちる桜
君のいない人生を耐えられるだろうか
あの日一緒に見た桜は、雪のように美しく
あの瞬間に僕らを包んだ雪景色は、まるで桜のように煌めいていた
時の流れと共に必ず現れる桜や雪
だけど唯一いないのは、君だけ
君がいない人生『を』耐えられるのだろうか
これから先の人生を耐えたれるのだろうか
想像もできない将来に
1991 僕は瞬くように恋をした
1991 いつも夢見るように生きていた
僕は確かにあの頃、恋をしていた
その恋が美しく光るようにと、夢見るようにずっと生きていた
いつまでも、君といたかった
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