
鬼才藤本タツキ作である不屈の名作『ルックバック』
たった一巻で織りなす、二人の人物像。
お互いがお互いを必要とし、大好きな『漫画』に想いを注ぎ続けた時間を切り取った作品。
変態的な作画とストーリーは、読む人の心を掴んで離さないものとなっている。
誰かに評価して欲しかった彼女
この世の中の小学四年生の中で、一番絵が上手い
周りの評価も相まって、そう信じてやまない彼女。絵を描くと人から評価され、嬉しくてしょうがない。毎週書き続けた四コマ漫画もその評価対象として見られ続け、彼女の表現の場の一つであった。
そこに現れた、顔も見たこともない同級生の子の絵。
自分がみても圧倒的な手に入れる力の差。他のクラスメイトが見ても、それは一目瞭然。その画力の差を言葉で突きつけられることになる。
負けたくない
その想いが彼女を突き動かし、本格的な絵の練習を始めた。友達と遊ぶ時間も勉強の時間もぐだぐだとする時間も削りに削り、彼女は書き続けた。周りになんと言われようと、書き続けた。
しかし、どんなに書き続けても自分の作品の隣に現れる彼女の絵には、到底届かないと。上手くなりたいと書き続けた絵を書き続けても、誰も。何も言ってくれない。そんな事実に直面し、一度ペンを置く彼女。
翌る日、彼女は出会う。家を訪れ、そのスケッチブックの量に。その圧倒的な力の差を感じた彼女に。
怖くなって逃げてしまおうとした彼女に、掛かった声。その言葉にどれだけ救われただろうか。彼女の努力がその言葉だけでどれだけ報われただろうか。彼女は、嬉しかった。

仲間を見つけた彼女
彼女の唯一の外との繋がりは、『彼女』が描く四コマ漫画だけだった。
自分と同じ歳の人も絵を描いている。絵で自分を表現している。部屋に閉じこもる彼女に注がれた一筋の光を繋がりを無くさないよう、彼女もまた描き続ける。
しかし、いつの日か『彼女』の絵を見ることがなくなってしまった。どんどん上手くなっていく『彼女』の絵を、描く漫画を楽しみだったのに、何故か止まってしまう。
それでも、好きな絵を描き続け、練習し続ける彼女。
ある日突然、聞き覚えのない声と足音がした。驚きのあまり、声も出さずじっとしていると、ドアの隙間から、滑り込んできた一枚の紙。
それは、見覚えのある。とても大好きで。尊敬している。彼女にとって唯一の光である、絵だった。

描き続ける彼女たち。次第にすれ違った彼女たちの結末
彼女たちは書き続けた。
中学生の間、いろんな出版社に持ち込み、作品を生み出し続けた。
高校生になっても変わらず、描き続けた。
二人で一人の作家として、描き続けた。
しかし、漫画家としての転機、お互いの目指す夢に差が出てきた。
お互いに納得ができぬまま、お互いの道に歩み続け、お互いにそれぞれの想いで描き続けた。
しかし、ある時突然の別れに手も足も止まる。
描き続けることも歩み続けることも出来なくなった彼女は、気付く「自分が絵の道に誘い込んでしまったからだ」と。絵なんて描いても何の意味もないのにそんな道に手を引っ張ってしまったからなのだと。
自暴自棄になる寸前、彼女が導いた『彼女』の部屋。
彼女はそこで振り返る。自分が描き続けていた理由を。

彼女が描き続ける理由にはいつでも
描くのもめんどくさい、考えるのもめんどくさい。読むのだけの方がいいはずの漫画を描き続ける理由。
その理由を振り返ればいつだってあなたがいたのだから。
あなたと描いた作品が初めて評価されたあの日。賞金を握り締め、街に出かけたあの日を決して忘れない。
あなたが私の腕を掴んで殻から引っ張ってくれたことを決して忘れない。
『だからもう一度、描き続ける』
アニメ映画「ルックバック」2024年6月28日公開予定
最高の形で、再度この作品に触れることができる。
PVも拝見し、ここ最近の映画プロモーション映像として最高峰の出来だと感じたのは間違いない。
確実に最高の映画になることに違いないと思い、その公開の日まで、じっくりと待ちたいと思う。
