
正しさを主張すること
人が人を捌くこの世界で、間違いは生じる
その間違えを正すことは、大衆が許さない
疑われる中で、戦うことは決して簡単なことではなく
時として、逃げることで手段を広げるほかないのだ
逃げることは、間違いである
そんな大衆の考えとは裏腹に、逃げ、戦う一人の青年の物語
※ネタバレあります
『正体』キャスト 主演:横浜流星
原作『正体/染井為人』
鏑木慶一:横浜流星

安藤沙耶香:吉岡里帆

野々村和也:森本慎太郎

酒井舞:山田杏奈

又貫征吾:山田孝之

川田誠一:松重豊
井澄正平:前田公輝
黒島:田島亮
宮村勇太:遠藤雄弥
小田花梨:宮崎優
この世界をもう一度見たかった

18歳の幼い子どもが、罪を背負う
生きることを覚えるには幼過ぎて、世界を知るにも経験がない
そんな中、大勢の大人から疑われる青年は、この世界から迫害されていた
ここでは正しいことを主張しても意味がない
そう、悟った青年は、残された唯一の手段である、「逃亡」を決意する
逃げれば、より疑われる
逃げれば罪を認めたことになる
名前を変え、見た目を変え
本物の自分を捨てて、別の人として生きること
そんなリスクを背負っても、可能性が1%でも残る手段で彼は戦うことを選んだ
逃げながら戦い、その先に手に入れたモノは

彼は、鏑木慶一という素性を捨て、逃げ続ける
味方はいない、震える手を取ってくれる人もいない
心が蝕まれ、苦しくて、人が怖くて
ゆっくり眠れる時間がない
それでも、たった一つの希望のため、戦うため、彼は逃げる
そして彼は、人と出会っていく
「友達と言ってくれる人ができた」
自分が苦しい中でも、生きづらさに苦しむ人に手を伸ばしたら理解してくれる人
お酒の苦さと美味しさを教えてくれた人、乾杯してくれた人
「初めて信じてくれた人ができた」
雨に濡れ行き場のない自分を暖かく包んでくれ、自分の能力も認めてくれた
何より、自分の過去や素性は関係なく、今の自分を信じてくれると言ってくれた
「好意を寄せてくれる人ができた」
今の自分の行いを見てくれる
懸命に堅実に生きる姿を目指す姿だと目を向けてくれた
彼は、ただ必死に生きていて、目的のために逃げていただけだった
それでもその姿から見えた、彼自身の”本物の姿”を見てくれた人が彼の味方になってくれた
それは、勉三でも那須でも桜井でもあり、それら全て含めて鏑木慶一という人なのだと
彼自身の心を見てくれる人を彼は彼の力で手に入れたのだ
誰もが持つ未来を生きる権利

正しいことを正しいと主張すること
誰からも疑われる中で戦うことは決して簡単なことではない
それでも、正しいことを正しいと主張すれば信じてくれる人がいる
生まれて初めて仕事をして、生まれて初めてお酒を飲んで、友達ができて
人を好きなることができた
生きていてよかった
そして、もっと生きたいと思えた
待ってくれている人がいる心強さ
「生きていてよかった」
と、彼はその感覚を自力で手に入れたのだ
そして、もっと生きていたいと思えるように、世界を信じてみようと思えるようになった
夢のために逃げないことにした、目標を持つことにした、正しいことを正しいのだと負けないことにした
与えられた人の温かさに感謝をする彼も、彼ら彼女らに与えたものが確かにあったのだ
そして掴んだその判決は、彼にも彼女らにも何にも変え難い大きな一歩になった
世間体の抑止力
面子が潰れないようにと、利用された一人の青年
あまりにも大き過ぎるその重荷の中で彼は、戦う気力を失わなかった
児童養護施設で育った鏑木という人物の生い立ちは、それ以上描かれていない
それ自体も視聴者に想像させる鏑木という人物像は、視聴者の偏見や固定概念をも浮き彫りにさせていく
これは、実話ではなくフィクションではあるものの、少年法が改正された中、冤罪の可能性で戦い続ける人への思い向けは、少し改める必要があるのではないだろうか
被害者に加え、冤罪被害者というものにフォーカスを当てたこの作品は
Netflixで視聴が可能でドラマ版も存在するので、ぜひ視聴してみてください